難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究 厚生労働省難治性疾患政策研究事業

対象とする病気

原発性硬化性胆管炎(PSC)

最終更新日:2026年9月15日NEW

1.どのような病気ですか?

食物の消化や吸収に関わる胆汁は、肝臓で1日あたり約1リットル生成されて胆管という管に排泄されます。胆汁は肝臓内の細い胆管を経て、空腹時に胆嚢で濃縮されたのち、食事(食物摂取)による胆嚢収縮によって太い胆管を経て十二指腸内に排泄されます。胆管が障害されて細くなると胆汁の流れが悪くなり、黄疸が起こることがあります。
原発性硬化性胆管炎(げんぱつせいこうかせいたんかんえん)は障害されて細くなった胆管のために胆汁の流れが滞るとともに肝臓の働きが悪くなる病気です。肝臓の中・外の比較的太い胆管が障害されるのがPSCの特徴です。英語ではPrimary Sclerosing Cholangitisといい、頭文字をとってPSC(ピー・エス・シー)と呼ばれています。同じく胆管が障害される病気であるPBC同様、血液検査をするとALPやγGTPが上昇しますが、特徴的な自己抗体は存在せず、血液所見だけで診断することはできません。通常はERCPMRCPなどによる胆管像を基に診断します。肝生検といって、肝臓に針を刺して組織を取ってくる方法や、ERCPに引き続いて行われる胆道鏡検査といって細いカメラを胆管の中に入れて胆管の粘膜を観察する方法も診断が難しい方では有効です
また、PSCにはしばしば潰瘍性大腸炎クローン病などの炎症性腸疾患が合併します。ことに若い患者さんに多く、日本のPSC患者さん全体のおよそ40%、若い患者さんでは60%に炎症性腸疾患が合併すると報告されています。PSCに合併することが多いのは炎症性腸疾患の中でも潰瘍性大腸炎ですが、潰瘍性大腸炎クローン病のいずれとも診断がつかない非典型的な大腸炎を合併する場合もあります。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

2007年に行った疫学調査では、日本におけるPSC患者さんの総数は約1,200人と推定されていましたが、2018年の調査では2,300人と推定され、10年間でおよそ2倍に増加していました。この増加傾向を鑑みて、2026年の現在では約3,000人程度の患者さんがおられるものと推測しています。世界的にみてもPSCの患者さんは増加しています。

3.この病気はどのような人に多いのですか

頻度は男性にやや多く、発症年齢は20歳代と60歳代に2つのピークがみられます。10歳代の子どもに発症することも珍しくはなく、前述の全国調査では18歳未満の患者さんが55例登録されました。また、前述のように潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の患者さんに多いこともわかっています

4.この病気の原因はわかっているのですか

まだ分かっていません。炎症性腸疾患を合併することが多いことから、腸内環境の影響が一つの原因と考えられています。PSCの方では、腸内に存在する細菌の種類が減っていることや、特定の細菌が増えているといった報告がなされており、現在種々の研究が行われていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。また、およそ30%の患者さんで抗核抗体が検出されることなどから自己免疫の関与も示唆されています。

5.この病気は遺伝するのですか

遺伝はしません。しかし、他の自己免疫疾患と同じように、PSCの発症に遺伝の影響がある程度存在することは確かめられており、海外では発症に関与する遺伝子がいくつか同定されています。

6.この病気ではどのような症状がおきますか

PSCでは黄疸やかゆみで発症することが多いですが、無症状のまま人間ドックや健診で肝機能検査や腹部エコー検査の異常を指摘され、それをきっかけとして診断される場合もあります。診断された後特に症状はないまま経過する方もおられますが、胆管が狭くなり胆汁の流れが滞ることによって起こる黄疸や皮膚のかゆみ、そこに細菌が感染して起こる胆管炎などの症状が出現することがあります。PSCでは肝臓の機能が徐々に低下し、肝硬変へと進行します。その結果、他の原因による肝硬変同様、食道・胃静脈瘤腹水黄疸肝性脳症などを伴い、肝不全へと進行して、肝移植を行わない限り救命できない状態になることがあります。また、PSCでは胆管癌を合併することも多いことが知られています。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

日本では多くの場合ウルソデオキシコール酸が使用され、これによってALP・γGTPの値は下がってきます。これらの値が十分低下しない場合、高中性脂肪血症の治療薬であるフィブラート系薬剤を追加することによってALP・γGTPはさらに低下することも明らかにされています。しかし、これらの薬がPSC自体の進行を押さえ、長期予後を改善しているかどうかについては十分なデータが得られておらず、今後さらに研究が必要です。また、胆管の強い狭窄が認められて黄疸や胆管炎が出現した場合には、ERCPという内視鏡技術による胆管拡張治療が行われます。進行して肝不全に陥った場合には肝移植が唯一の治療法となります。わが国では脳死肝移植の例数は少なく、ほとんどの場合生体部分肝移植が行われています。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか

無症状のまま経過する場合、またウルソデオキシコール酸の服薬で良好な経過をたどる場合があります。一方、発熱や腹痛を伴う胆管炎を併発したり黄疸が出現したりしながら病気が進行し、肝硬変へと進行する方もいます。また、胆管癌が合併することも多く、日本よりも患者さんの多い欧米ではかなり高率に合併するので問題となっています。進行した症例には肝移植が有効で、移植後5年生存率75%と良好ですが、肝移植後の再発も少なくありません。
2015年の全国調査によると、日本のPSC患者さん全体において、PSCと診断されてから5年・10年後に生存している確率は、それぞれ81.3%、69.9%、肝移植を受けずに5年・10年後に生存している確率は77.4%、54.9%と報告されています。ただし、診断時に症状がなかった患者さんに限定すると肝移植なし5年・10年生存率は87.3%、66.5%、診断時に症状がなく、かつ若い患者さんであれば91.3%、73.5%でした。

9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

血液検査や画像検査などを行いながら定期的に医師の診察を受け、薬を服用することが欠かせません。まれな病気ですので、可能であればPSCに詳しい専門医のもとを受診し、定期的な診察を受けることが望ましいところです。定期的な診察が困難でも、一度は専門医の診察を受けて、現状や今後の見通し、治療方針などを相談されるとよいでしょう。
症状がなければ日常生活には特別の注意は必要なく、安静にする必要はありません。仕事や家事、運動、食事も通常通りで結構です。病気が進行して肝硬変の状態に至ってしまった場合には、食事や運動など日常生活の中できめ細かい注意が必要になりますので、主治医の先生とよくご相談してください。

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