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肝外門脈閉塞症
最終更新日:2016年12月9日
1.概念・定義
肝外門脈閉塞症とは、肝門部を含めた肝外門脈の閉塞により門脈圧亢進症に至る症候群をいう。分類として、原発性肝外門脈閉塞症と続発性肝外門脈閉塞症とがある。小児の門脈圧亢進症のうち肝硬変によらない門脈圧亢進症として最も頻度が高い。
2.疫学
厚生省特定疾患門脈血行異常症調査研究班の全国調査では、年間受療患者数(有病者数)の推定値は340~560人である。男女比は約1:0.6とやや男性に多い。確定診断時の年齢は、20歳未満が一番多く、次に40~50歳代が続き、2峰性のピークを認める。確定診断時の平均年齢は40歳前後である。
3.病因
原発性肝外門脈閉塞症の病因は未だ不明であるが、血管形成異常、血液凝固異常、骨髄増殖性疾患の関与が言われている。続発性肝外門脈閉塞症をきたすものとしては、新生児臍炎、腫瘍、肝硬変や特発性門脈圧亢進症に伴う肝外門脈血栓、胆嚢胆管炎、膵炎、腹腔内手術などがあるが、因果関係不明の場合もある。
4.治療
合併する門脈圧亢進の症候(食道・胃静脈瘤、脾腫、脾機能亢進症)に対する治療が中心になる。対症療法は下記に示す通りであるが、門脈圧を減圧するものではなく、門脈亢進症状態は一生涯継続するため、あらゆる消化管に難治性の静脈瘤が発生する。そしてその出血率はウイルス性肝硬変よりも有意に高い。著しく上昇した門脈圧のため、静脈瘤出血を来すと大量出血となり、出血性ショックに至る。さらに、門脈大循環短絡(側副血行路)を形成することが多く、肝性脳症や腹水が出現し、長期療養を必要とするため定期的な受診が必要である。
(1)静脈瘤に対する治療
・静脈瘤破裂による出血はバルーンタンポナーデ法、ピトレッシン点滴静注などで対症的に管理し、すみやかに内視鏡的治療(内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮術)を行う。
・保存的処置で止血した症例では内視鏡的治療の継続または待機手術を考慮する。
・未出血の症例では内視鏡所見を参考にして予防的な内視鏡的治療ないし手術を考慮する。
(2)脾機能亢進に対する治療
血球減少が高度の症例では部分脾動脈塞栓術や脾摘術を考慮する。
5.予後
厚生省特定疾患門脈血行異常症調査研究班の全国調査に付随した治療成績・予後に関する解析(全103例)では、10年累積生存率は93.3%と良好である。食道胃静脈瘤に対する出血コントロールが肝要であり、食道静脈瘤に関しては内視鏡治療が主に選択されており、5年累積再発率は42.1%であった。