難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究 厚生労働省難治性疾患政策研究事業

対象とする病気

キーワード集

最終更新日:2019年3月8日

日本語表記

英語表記

日本語表記

アザチオプリン

免疫抑制薬の一種。体内でメルカプトプリンを介してDNA合成を抑制し、免疫機能を抑制する薬剤。自己免疫性肝炎の他、さまざまな自己免疫疾患や臓器移植後の免疫抑制に使用される。副作用として骨髄抑制(血液中の白血球数・赤血球数・血小板数の減少)、悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状などがある。

ウルソデオキシコール酸

胆汁の成分である胆汁酸の一種。漢方では“熊胆:くまのい”として古くから知られており、胆石症や慢性肝臓病の治療に使用されていたが、1980年代後半にPBCに有効であることがわかり、現在重症の黄疸の方を除いたほとんどの患者さんに使われている。まれに副作用として胃痛や下痢などの消化器症状がみられるが、もともと人間の体内に存在する物質でもあり、安全な薬で、長期にわたって飲むことができる。PBCだけではなく、PSCに対しても第一選択薬として使用される。

炎症性腸疾患

消化管、ことに小腸・大腸に原因不明の炎症が起こり、腹痛、消化管出血、下痢などさまざまな消化器関連の症状が起こる病気。主に大腸に起こる潰瘍性大腸炎、および小腸・大腸、さらに消化管全体に起こるクローン病が知られている。いずれも指定難病である。

黄疸

血液の中のビリルビン濃度の上昇により、眼や皮膚が黄色くなるという症状。重症の肝硬変でみられるほか、原発性硬化性胆管炎、胆管結石、胆管癌・膵臓癌などのため胆管が狭窄・閉塞した場合に出現する。

潰瘍性大腸炎

炎症性腸疾患」の項参照。

肝炎

肝細胞が主にリンパ球によって破壊される病気。肝細胞の表面に存在する何らかの物質をリンパ球が異常(非自己)と認識して、肝細胞を破壊する。多くの場合、肝細胞に感染したウイルス由来が異常と認識され肝炎を発症する(ウイルス性肝炎)が、もともと肝細胞に存在する自己の物質が誤って非自己と認識され、リンパ球の攻撃を受け破壊されることがあり、これによって生ずる病気が自己免疫性肝炎である。また、経過の面からは、ゆっくりと長期にわたり肝細胞が破壊される慢性肝炎、一気に多くの肝細胞が破壊される急性肝炎に分類される。さらに破壊が激しく急激に進行するのが劇症肝炎である。

肝硬変

肝細胞は再生能力が高く、肝細胞の破壊が短期間だけで終われば元通りに再生される。しかし、さまざまな原因によって長期にわたり肝細胞が破壊されつづけると、肝細胞の再生が十分に行われず、破壊された肝細胞に代わって肝臓の中には少しずつ線維が増えていき、その一方で正常の肝細胞が減っていく。この結果生ずるのが肝硬変であり、線維が増えた結果肝臓が硬くなり、肝臓へ血液を流し込む門脈の流れが滞るため門脈圧が亢進する。一方で肝細胞が減少するため、代謝・合成・解毒といった肝臓の機能が低下していく。初期の肝硬変は症状がないが、進行すると黄疸、腹水、食道・胃静脈瘤、肝性脳症などの症状が出現し、肝臓癌ができることも稀ではない。C型肝炎、B型肝炎、AIH、PBC、PSC、アルコールなど肝臓病にはさまざまな原因があるが、原因に関わらず進行すれば肝硬変へと移行する。

肝細胞

肝臓を構成する細胞の一つ。肝臓全体の細胞数の約60%、容積では80%を占める。代謝、蛋白合成、糖・脂質の貯蔵・合成、解毒など、肝臓が司っている働きのほとんどは肝細胞によって行われている。

肝性脳症

重症の肝硬変の症状の一つ。本来肝臓で解毒されるはずのアンモニアなどの有害な物質が、肝臓の働きが低下したために解毒されず、全身、ことに脳へ回ってしまうため、意識がぼんやりしたり、無くなったりする症状。特殊な組成のアミノ酸による点滴などにより治療する。また便秘をすると肝性脳症を起こしやすいため、便通の改善も重要である。

肝不全

肝硬変の悪化あるいは生命および日常生活を維持するために必要な肝臓の働きができなくなっている状態。黄疸、腹水など様々な症状を伴い、通常は肝移植を行わないと救命できない。

既往感染

ウイルスに感染したことがあるものの現在は感染がなく治っていると判断される状態。HBs抗原が陰性であり、かつHBs抗体・HBc抗体が陽性の場合には、B型肝炎ウイルスにかつて感染したことがあるものの現在は治癒していると判断され、キャリアではなく「既往感染」と診断する。B型肝炎ウイルスの場合既往感染と判断されても肝細胞の中にごく微量のB型肝炎ウイルスが残存していることがあり、副腎皮質ステロイド薬や抗癌薬の投与によってこの微量のウイルスが再増殖することがある。

キャリア

B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染が持続している患者さんのこと。血中のHBs抗原が持続的に陽性の場合、B型肝炎ウイルスキャリアと診断する。

急性肝炎

肝炎」の項参照。

クローン病

炎症性腸疾患」の項参照。

抗核抗体(anti-nuclear autoantibodies, ANA)

細胞の中の核という小器官に存在するさまざまな物質(蛋白質、DNAなど)を抗原とする自己抗体。AIHで検出されるほか、様々な自己免疫疾患で検出される。自己免疫疾患のない健康な人でも検出されることもある。

抗平滑筋抗体(anti-smooth muscle autoantibodies, ASMA)

人間の筋肉は大きく平滑筋と横紋筋とに分類されるが、このうち平滑筋に存在する蛋白質を抗原とする自己抗体。AIHで検出されることがある。

抗ミトコンドリア抗体(anti-mitochondrial autoantibodies, AMA)

細胞の中に存在するミトコンドリアという小器官にふくまれる蛋白質を抗原とする自己抗体。PBC患者さんのおよそ90%で検出される一方、PBC以外の人で検出されることはほとんどないため、PBCの診断に重要な役割を果たしている。

自己抗体

自己免疫の働きにより、自らの身体に存在する物質を異物として認識し反応した結果つくられる抗体。ある種の自己抗体は自己免疫疾患を発症するきっかけになるが、自己抗体の存在自体が病的というわけではなく、病気のない健康な人でも検出されることがある。

自己免疫・自己免疫反応、自己免疫疾患

身体の健康を守る免疫系は、外から身体のなかへ侵入してきた異物(非自己)を抗原として認識し、これを無力化する蛋白質(抗体)をつくったり、他の物質・細胞によって異物を壊したりして身体を防御する。しかしその一方で、生まれながら身体のなかにある物質(自己)に対しては免疫系による防御メカニズムは原則として働かない。ところが、自己・非自己の区別は時としてかなり困難であり、自己由来の物質(細胞・組織)を異物(非自己)と認識して免疫系が攻撃してしまうことがあり、この現象を自己免疫あるいは自己免疫反応、この現象によって起こってくる病気を自己免疫疾患と呼ぶ。攻撃される細胞・臓器の違いにより、さまざまな種類の自己免疫疾患が知られている。

指定難病

指定難病制度とは」を参照。

食道・胃静脈瘤

門脈圧亢進症のため、胃・食道の粘膜を流れる静脈が瘤(こぶ)のように隆起した状態を、それぞれ胃静脈瘤、食道静脈瘤と呼ぶ。静脈瘤が存在するだけでは症状はみられないが、静脈瘤が破れると激しい出血を来し、しばしば吐血する。このような場合内視鏡により出血を止める。また、出欠の危険が高い食道・胃静脈瘤がみられた場合、出血を予防するため前もって内視鏡による治療を行う場合も多い。

胆管

胆汁を流すための管。肝臓内ではとても細い、顕微鏡を使わないと見えない管だが、川の流れのように、細い管がいくつも集合してだんだんと大きくなり、一本にまとまり太い管となって肝臓から出て行き、十二指腸に開口する。

胆管癌

胆管に発生する癌。胆管のどの部分にも生じ得る。肝臓の中に生じた場合には肝内胆管癌と呼ぶ。

胆汁

緑茶色の苦みがあるアルカリ性の液体。肝細胞で合成される。胆汁酸を含み、十二指腸内で食物と混ざり、主に脂肪の消化を助ける働きをする。

胆道系酵素

ALP」、「γGTP」の項参照。

胆道造影

肝内~肝外の胆管を様々の方法によって映し出し、狭い個所や拡張している箇所がないか、結石や腫瘍などが存在しないかどうかを検査する方法。主に、内視鏡を口から挿入し、胆道に直接造影剤を流し込むことによって胆道を造影する「内視鏡的逆行性胆管膵管造影」(endoscopic retrograde cholangiopancreatography、ERCP)、身体の中に管を入れることなく、MRI検査によって胆道を造影する「磁気共鳴胆管膵管造影」(Magnetic resonance cholangiopancreatography、MRCP)が行われる。ERCPの場合、入院が必要であり、身体に対する侵襲は強いものの、造影するだけではなく組織の採取や治療も同時に行うことができる。一方MRCPでは、身体への侵襲はほとんどなく外来で検査を行うことが可能だが、組織の採取・治療は行うことができず、MRI機器の性能によっては良い結果が得られない場合も多い。

長期予後

ある病気にかかった患者さんが長期的にみて生存しているか、肝移植を受けるような悪い状態になっていないか、ということ。「長期予後が良好」という場合、死亡する患者さんや、肝移植を必要とするほど悪化する患者さんは長期的にみてとても少ない、ということを意味する。

副腎皮質ステロイド

副腎皮質から分泌されるホルモンの一つ。炎症と免疫を抑制する作用があり、作用時間を長くなるように工夫して化学合成し薬剤として使用されている。代表的な薬剤はプレドニゾロンであり、自己免疫性肝炎でまず使用される薬である。

腹水

重症になった肝硬変の症状の一つ。お腹の中に水が溜まった結果、お腹が張る、素ズボン・スカートがきつい、息苦しい、などの自覚症状がみられる。食事中の塩分制限や利尿薬投与などの治療を行う。

ベザフィブラート

もともと高脂血症の治療に使われる薬だが、PBCやPSCでもALP・γGTPを下げる効果があることから、日本ではウルソデオキシコール酸だけでは効果が不十分な場合使用されることがある。2018年フランスのグループから、前向きランダム化比較試験によってPBC患者におけるウルソデオキシコール酸とベザフィブラート併用の有効性が報告された(N Engl J Med, 378:2171, 2018)。日本からも後向きではあるが、ウルソデオキシコール酸とベザフィブラートの併用がPBC患者の長期予後を改善していることが報告されている(Hepatology 2019 Feb 8. doi: 10. 1002/hep.30552.)。

慢性肝炎

肝炎」の項参照。

免疫グロブリン

リンパ系細胞が抗原によって刺激され生産する蛋白質。抗体とほぼ同じ意味であり、分子量や構造、機能などに基づいて5つのクラス(IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)に分けられる。

門脈、門脈圧亢進症

通常、身体の中の臓器を流れる血管は、心臓からその臓器へ血液を流す「動脈」、およびその臓器から心臓へ血液を流す「静脈」の2種類のみである。しかし、胃・小腸や大腸、脾臓などお腹の中の臓器では、口から摂取した食物から胃腸を通して吸収した栄養分などを肝臓へ運ぶ必要があるため、これらの臓器から流出した血液はそのまま心臓へ運ばれるのではなく、いったん肝臓へ流れ込む。このように、お腹の臓器から肝臓へ流れる血液、およびその血管を「門脈」と呼んでいる。
肝硬変や、門脈に様々な異常が起こる門脈血行異常症では、門脈の血液が流れにくくなり圧力が上昇する。その結果、門脈の血液が胃・食道・脾臓へ逆流し、さまざまな症状が起こる。これらの症状を総称して門脈圧亢進症と呼ぶ。

英語表記

AST(aspartate aminotransferase、アスパラテート・アミノトランスフェラーゼ)

肝臓における代謝に関わる酵素。血液検査のうち、いわゆる肝機能検査の一つ。かつてはGOTと呼ばれた。通常は肝細胞の中に存在するため血中濃度は低いが、肝炎など何らかの原因によって肝細胞が破壊されると血中に放出され、血中の値が上昇する。従って肝細胞がどの程度破壊されているかを判断する指標として用いられる。ただし、肝細胞以外に筋肉などにも存在するため、ASTの上昇が常に肝臓の異常を示すとは限らない。

ALT(alanine aminotransferase、アラニン・アミノトランスフェラーゼ)

肝臓における代謝に関わる酵素。血液検査のうち、いわゆる肝機能検査の一つ。かつてはGPTと呼ばれた。AST同様、通常は肝細胞の中に存在するため血中濃度は低いが、肝炎など何らかの原因によって肝細胞が破壊されると血中に放出され、血中の値が上昇する。従って肝細胞がどの程度破壊されているかを判断する指標として用いられる。ASTと異なり、肝細胞以外にはほとんど存在せず、ALTの上昇は肝細胞の破壊を意味する。

ALP(alkaline phosphatase、アルカリ・フォスファターゼ)

肝臓における代謝に関わる酵素。血液検査のうち、いわゆる肝機能検査の一つ。胆管に何らかの障害が起こると血液中の濃度が上昇するため、胆管系酵素とも呼ばれる。ただし、肝臓・胆管以外の臓器に異常がある場合にも上昇するほか、子どもなど身体に何ら異常がない場合でも上昇することがある。

ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)

胆道造影」の項参照。

γGTP(gamma-glutamyl transpeptidase、ガンマ・グルタミル・トランスペプチダーゼ)

肝臓での薬物の解毒・分解にかかわる酵素。ALP同様肝機能検査の一つであり、やはり胆管の障害で上昇する。薬物の一つであるアルコールの飲み過ぎによって上昇することもよく知られている。

HLA(human leukocyte antigen、エッチ・エル・エー)

白血球の型を示す蛋白質の一種。細胞の表面に存在し、細菌やウイルスなどの異物(病原体)の断片をリンパ球に提示する。人種によってHLAの型に差があり、さらに自己免疫疾患のかかりやすさもHLAによって異なるため、AIHやPBCではどのHLAの型を持っている人が多いかということが以前より研究されている。日本人の自己免疫性肝炎ではHLA-DR4という型を持っている人が多い。

IgG

免疫グロブリンは分子量・構造によってIgA、IgD、IgE、IgG、IgMに分類される。このうち、血中で最も豊富に存在するのがIgGである。AIHでは血中IgGの値が上昇することが特徴で、診断基準の一つとなっている。

MRCP(Magnetic resonance cholangiopancreatography)

胆道造影」の項参照。

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